この仕事は、一生懸命やっていれば、必ず自分の資質を疑うときもありますが、つねに努力し、ずっと続けて、体験を積んでいくことがかんじんです。経験の少ない人ほど、自分のうまくできた話ばかりをするようになります。それは嘘ではないけれども、実情とは異なります。
考えてみると、これは不思議な職業だと思います。いくら忙しくても、ほかの職業のように、簡単にアシスタントを使うこともできません。自分でクライエントと時間を共有する以外にはないし、中根さんが指摘されたような時間をもてるのは、自分しかありません。
自分でしかできないとなると、クライエントと面接の約束をしても、なんらかの事情でどうしても会えなくなることもあります。そういう場合は、相手に正直に話して了承してもらうしかありません。
そのときに、表面を取りつくろって、弁解がましくなったり、嘘をついたりすれば、すぐに相手にわかります。私たちのところに来るような人たちは普通の人よりずっと勘が鋭いですから、嘘は絶対に禁物です。
時間に遅れないことも重要ですが、特例として、時間にルーズな人もいます。私か学んでいたころのユング研究所の所長のフランツーリックリンという人は、時間遅れの常習犯でした。
あるクライエントと一時間の予定で会っていても、話に熱中しだしたら、一時間半だっても、二時間だっても終わらない。そのあとの面接で待っている人がいても、まったく気にしない。
リック所長があまりいつも遅れるので、クライエントが遅れていったら、向こうはちゃんと定刻に待っていたということもあります。