2012年6月20日水曜日

深層心理学で他人の心がわかるか

一九六五年に私がユング派の分析家の資格を得て帰国、心理療法の実際に取り組むことになると同時に、日本で臨床心理学を学ぼうとする人たちの指導をすることになりましたが、そのころもちろん、この両者の主張には、それぞれに根拠があって、たとえば専門家はいらないと主張する人たちは、「専門家」という権威を後ろ楯にして、弱者としてのクライエントを食いものにしたり、不必要に統制したりすることに反発していたわけです。

そのような中で、当時の私が考えていたのは、資格とか専門家とか、制度上の議論を闘わす前に、日本の臨床心理士がそれにふさわしい能力を身につけることが先決だということでした。

実際、心理療法など役に立だないと主張する人たちの中には、それを行うための基本的訓練も受けず、ちょっと真似ごとのようなことをしただけで、その経験をもとに発言している人が多かったのです。

クライエントとともに歩むとか、クライエントの可能性が大切だから、こちらの能力などどうでもいいと単純に考え、それを行おうとしても、素人の熱意や善意だけではどうしようもないし、危険さえともないます。心理療法の訓練を受けていない人が心理療法的なことをはじめて、クライエントをますます悪い状況に追いこんでしまうという例もけっして少なくありません。

そのようなことを考えると、心理療法家としての資格を設定することは、クライエントの利益を守るためにも必要だと思われます。ただし、これは医者や弁護士などの他の専門職の資格とは少し異なるという自覚が必要です。