2015年5月1日金曜日

国債に吸い込まれるマネー

国富ファンドの台頭も意外なところで円の見直しにつながるかもしれない。安全を重視する外貨準備が債券運用中心なのに対し、収益を追求する国富ファンドは株式運用にも比重を置く。だから日本の株式時価総額が世界全体で一〇%以上を維持できれば、国富ファンドに占める円資産の比重は、円建て比率が三%強にとどまる外貨準備に比べて高くなる可能性がある。そのためにも、企業がグローバルな競争力を高めるとともに、主体的な通貨戦略を立てられるだけの総合的な国力の回復が欠かせない。長い目で見た日本の課題はハッキリしている。束アジアー中国-米国という経済交流が深まるなか、自らの比較優位を確保できる成長産業を発展させ、持続的な成長を果たすこと。欧州がECUという舞台でビジネスを競ったように、アジアという舞台で日本の金融が実力を発揮することだ。

日本の名目GDPが年換算で初めて四百兆円に乗せたのは一九八九年一-三月期。平成元年のことだ。五百兆円乗せは九六年一一三月期である。バブルが崩壊しても、七年かけて日本経済は百兆円拡大した勘定になる。実は、民間企業や家計がバブルの後遺症に悩むなか、この景気拡大を支えたのは、公共投資なのである。不良債権問題が金融危機となって翌九七年に火を噴き、日本経済は決定的に失速した。その後、小泉改革などを経ていったんは立ち直ったかにみえたが、○八年九月のリーマンーショックを機に釣瓶落としとなり、いまだに立ち直っていない。

直近の○九年度の名目GDPは四百七十六兆円だが、これは九一年度以来の低水準だ。日本経済は失われた十年どころか二十年のトンネルの只中に入ってしまったといってよい。企業と家計が傷つき内需が低迷したことが長期低迷だ。○三年以降の景気回復は外需に依存する度合いが高まった分、世界経済後退の波を受けやすくなったのだ。○九年九月に誕生した民主党政権は、「福祉経済」のスローガンを掲げる。外需ではなく、内需主導の経済を目。指すと意気込む。従来の予算の無駄を「仕分け」して、浮いたお金で子ども手当などを導入し、消費を盛り上げようという。この路線の最大のリスクは過去二十年にわたり底割れしそうになるたびに経済を支えてきた、財政の破綻である。