2012年7月17日火曜日

心理療法家の他の専門職と異なる側面

心理療法家の他の専門職と異なる側面としては、人間の関係性ということが重要であること、治療の過程に創造的、発見的な要素が必要であることがあげられます。つまり、専門家が素人の知らない知識や技術を身につけて、それを適用することによって問題を解決していくというより、むしろ、心理療法家とクライエントの間に成立する関係によって、クライエントの潜在的可能性がはたらきはじめ、それによって両者の関係も深まり、可能性がかたちをとってあらわれやすくなってくるというものです。

その可能性が一挙に出現してくるときは、否定的なかたちをとることが多いので、危険性が非常に高くなります。たとえば自殺というかたちをとるかもしれないし、両親からの自立のはたらきが親殺しとなってあらわれることもあります。

ですから、このような過程をともにすることはきわめて困難です。このような困難な仕事をやり抜くためには、やはりどうしても訓練された専門家であることが必要になります。

心理療法家の仕事は危険に満ちた、大量のエネルギーを必要とする仕事で、簡単にできるものではありません。心理療法家の基本姿勢というのは、1 い訓練によって身につくものであり、改善されていくものです。

多くの人がなんとなく他人の役に立ちたいと思っているし、自分のおかげで他人がよくなったなどと思いたいものですから、他人の相談にのったり、指導をしてあげたりしたいと思う気持ちはよくわかりますが、それは趣味の範囲内であり、職業としての心理療法とは異なるものです。

また、心理療法家はつねに常識を超えた判断や考えを必要とされるだけに、常識にとらわれている人では心理療法家にはなれませんが、一般常識をよく知っていなければ、それを乗り越えることはできません。要するに、心理療法家にとっては、毎日の日常生活が訓練の場だということです。