2012年12月25日火曜日

現代の出産方法


全般的にみると一九八九年、病院など施設での出産は、九九・九%に達している。比較的恵まれた施設では、産科医と助産婦、それに数人の産科の看護婦でチームを組んで助産を行なうが、「産科医だけで助産婦さんは一人もいませんでした」という声を実際に聞いたこともある。またお産は昼夜ほとんど同じくらい起こるにもかかわらず、大部分の産科医は、夜は少数の助産婦と看護婦に出産現場をまかせて自宅待機し、出産直前(排臨)の知らせで良心的な医師は出てくるという。比較的恵まれた状況の病院でさえ、この調子であるから、そうではない産科医院などの実情はどうなのだろうかと心配になる。

さて助産婦や看護婦に関する法律は、「保健婦助産婦看護婦法」といい、一九四八年に制定された。しかし、この法律を作製したGHQの女性看護職者たちの本国アメリカでは、産婆に匹敵するような職業は設けられて1 らず、産婆が過小評価されたこと、また当時の日本は、男女の平等意識も低く、女性看護職の地位も医師に比べて格段に低かった時代に定められたこと夭林道子著『助産婦の戦後』勁草書房にくわしい)などにより、現状とは大変ズレている。しかし、定められて以来いまだに抜本的には変わっていない。いまでは高度な知識や実際の技術が要求され、新開発の産科器機を使いこなし、医師の代わりさえつとめねばならない。これでは助産婦や看護婦が超多忙で、人間的な看護を心がけても限度がある。

もちろん以上は大勢であって、全体ではない。なかには常に産科医がしっかりとつき添い、どうすれば、産婦の納得のいく、いいお産ができるかと、日夜努力している所もある。当然ながら、そのような使命感のある産科医は、常に産婦につき添い、細心の注意で見守っているから、産婦がどのようにしたがっているかも察知しやすく、結果として産婦主体のお産になりやすい。しかし残念ながら、それは少数派だ。

現代の出産方法では大勢をしめる病院や産科医院など、施設における出産方法について述べる。それは、おおむね次の四点にしぼられる。山仰臥姿勢で出産。閣産科医の指導する方法が正しい出産方法だと認知されているため、産婦はお産についてあまり知識を持たないで、産科医の指導に従う方がいいお産ができると思われている。閣お産に必要な知識を持っているのは産科医や助産婦だと思われているから、専門知識を持たない産婦の夫や身内などの参加は、無意味で衛生管理上問題が多いとして、分娩室への産婦以外の入室は認めていない場合が多い。

お産において産科医の行なう技術や知識は、一番大切かつ必要なものとみなされている。一方産婦はお産の知識は持たない素人で、産科医が専門的な情報や技術を説明しても理解できないとみなされている。したがって産科医が知識や技術を行使することについては、インフォームドコンセントは行なわなくてよいという主張が一般的だ。これらについて、産婦の側から考えてみたい。