2015年12月1日火曜日

中国の交通事情を考える

この設備の中には、振動や埃を極端に嫌う精密設備が数台含まれている。日本から特殊トラックに載せたまま、フェリーで中国の港まで行き、そこから工場建設現場まで特殊トラックに載せたまま輸送するのだ。中国の交通事情を考えると途中で他の車にぶつかられ、設備が台無しになると困るので工場まで公安(交通警察)の車に先導させ、回りも公安の車で固めて夜にゆっくりと五〇〇ほど運んだ。運ぶことはそれなりに苦労したが、そのような機械なので、工場にどのようなタイミングで運び、搬入し、据付けるのか非常に重要であった。普通なら、設計図面に基づき、施工図面を作成し、設備や材料の搬入等を考慮して、建屋を建設してゆくのだが、設計図面はあるが、施工図面がない。必要な材料リストがあり、納期も記入されているが、それに基づいた納入順に記入された詳細な日程表がない。

従って何をどのように設置していくかが一目で分からない。見ているとぶっつけ本番に近く、あとは現物あわせである。何かいつ搬入され、どの順番で設備を設置するのかのリストがないので、いつ何を行うかの予定が立だない。聞けば、日程表や図面を書いても無駄であるとのこと。理由は簡単。何かいつ搬入されるか分からないというのだ。即ち、契約納期はあっても守られない。しかし材料や設備が全て整うまでは待っていられないので、材料が来るたびに、全体を見ながらその場で責任者が進めていく。大物の設備がある場合は、それを搬入する順番も大事であるが、納期の関係で、彼らは、大物の設備の搬入の順番に関係なく、建屋の建設を到着した材料を使用して建設をどんどん進めていく。

特に冬場に差し掛かる時は、建設を急ぐ。理由は冬場のコンクリート打ちは、寒さで凍ってしまうので工事が出来ないからだ。(これは北京以北の東北地方の場合)出来上がってしまってから大物設備が来ると搬入に必要な場所を壊してしまう。これもレンガ造りであるから簡単である。そこから改めて、大物設備を運び込む。工事はそれで済むが、プラント契約などをして技術者の派遣をする場合、予定が立たず本当に困る。技術者を現地で遊ばすわけに行かない。かといって、彼らが必要な時に、簡単に出張に出すというわけにも行かない。日本側の日程もある。この工事のやり方には、散々手を焼かされた。これは、一九九七年頃の話だが、現在でも殆ど変わらないと聞いている。最近、私の住んでいる住居の前でマンションの建設工事が始まった。

前述したような工事の仕方で進めていく。マンションは数棟あり、全体を同じ速度で進めるわけでもなく、また、ある棟から順番に進めているようにも見えない。建物が建って詳細なところに来ると、図面を見て作業する姿も見えない。巻尺を持ってきて、現場で材料を加工して現物あわせしている。現場責任者が毎日のように、作業済みのところをチェックして回っている。翌日は指示がどのようにあったのか知らないが、再び手直しをしている。このようにして殆ど完成したが、いまだに購入者に部屋の鍵を渡していない。見ていると既に出来上がった屋根を再び部分的に剥がして手直しを始めた。恐らく雨が漏るのであろう。屋根以外もあちらこちらを手直ししている。面白いので毎日の如く進捗状況を観察していた。

私の会社の社員もこの度マンションを購入した。彼は最上階であった。工事の状況調査の為に、たびたび有給休暇を取る。彼にまだ住めないのかと質問をすると、未だ住めません。理由は屋根から漏水する。これではとても住めない。建設会社に文句を言うと、建設会社は愛想が良い。これはあちこちに言いふらされては困ると言うことだが、真面目に修理をしているとは思えないと。既に七回目の修理だという。私か諦めるのを待っているのではないかと言ったが、彼にとっては深刻な問題で諦めるわけには行かない。一生の問題である。何故こんなことが発生するかとなると、施工表には、材質等は書かれていない。メーカー名も書かれていない。建設会社はコストを下げてその分を利益にする為に、安い粗悪品を使用して問題なければその分利益が増える。