2014年7月15日火曜日

転換迫られる中山間地対策

日本でも、ウルグアイラウンドによる農産・畜産物の輸入増加による打撃緩和策の意味もあり、この数年、農水省は「中山間地総合対策」を実施し始めている。しかし、それは直接的所得補償ではなく、農協、土地改良区、第三セクターなどを通じた、相も変わらぬ圃場区画整理や排水溝、あるいはハコモノ建設など公共事業中心の政策である。平地でやってきた土地改良事業を無理やり中山間地に持ち込み、農民によけいな自己負担を押しつけ、美しい田畑や周辺の自然をコンクリートで固めて破壊している、と批判されても当然の実態だ。

これでは、農水省が唱え始めているグリーン・ツーリズムなど成り立だないだろう。欧州の所得政策とは縁もゆかりもないことも確かである。先にみたように、農水省は土地改良費として膨大な予算をもっている。土地改良事業はその主要な役目を終えたといわれる今日、その一部でも「マイナスの所得税」に振り向ければ、欧州諸国なみの対策が可能であろう。それがポスト公共事業時代のオルタナティブの重要な一つでもある。

そしてあたりを見回してみると、明日へのオルタナテーフの実践が確実にふえていることがわかる。そうした自治体の実験をのぞいてみょう。東京都は一九九七年から、都内への車の流入規制も視野にトれながら、道路を走る車の量そのものを規制する新たな交通対策の検討を始める。いくら道路をつくっても一向に車の渋滞は解消されないし、大気汚染や騒音公害は悪化しこそすれ、改善の見込みはない。一方で、都心を一周する都営地下鉄19号線環状部が二〇〇〇年には開業する予定だし、ほかの路線も順次延長されていく。それならば、車から地下鉄など大量交通機関へ乗り換えてもらおうという、発想の転換だ。

都心の周辺に駐車場を設けてその先は、地下鉄、電車、バスなどへ乗り換える「パークーアンドーライド」や、ナンバーープレートによって今日は奇数の車、明日は偶数の車だけと車の都心への乗り入れそのものを規制する方法もある。トラックは夜間など一定の時間帯だけに通行を認めるのも有効だろう。

2014年7月1日火曜日

信託の種類

信託はその目的だとか、委託する財産の種類などによっていろいろの分け方があります。まず、信託の目的が公益か私益かによって公益信託と私益信託になります。公益信託というのは、寺院の建立、学校の設立、貧民の救済など学術、宗教、慈善事業の援助を目的とした信託で、外国ではこの種の信託が古くから発達していますが、わが国では後に述べる通り、昭和五十二年に開発され、それ以後急速に発達をみています。

次に、その信託が当事者間の意思によるものをもとに、自由な契約による設定信託(任意信託)と信託が満期などで終了しても受益者に信託財産をきちんと引き渡すまでは信託が存続するとされる法定信託とに分けることができます。たいていの場合には、普通の信託はすべて設定信託となります。また信託が当事者間の契約によるか、委託者の遺言によるかで契約信託(生前信託)と遺言信託(死後信託)に分かれます。

さらに、委託者が個人であるか法人であるかによって、個人信託と法人信託(会社信託)になります。これは信託する財産の持ち主が個人か法人かということであって、受託者が個人であるか法人であるかには関係ありません。そうして、信託の初めは個人信託ばかりでしたが、法人の財産が増えるにっれて、だんだん法人信託の割合も増える傾向にあります。このほか、委託者が受益者と同じ人であるか別の人であるかによって自益信託と他益信託に分けたり、受託者が信託を商売としているかどうかで営業信託と非営業信託に分ける分け方などがあります。

しかし実際には、わが国の信託が営業信託を中心に発達してきたため、信託業法にもとづいて信託会社が引き受けることのできる信託財産の種類によって分ける分け方が広く使われているようです。この場合は、①金銭の信託、②有価証券の信託、③金銭債権の信託、④動産の信託、⑤土地とその定着物の信託、⑥地上権と土地の賃借権の信託、⑦包括信託の七つに分かれます。このうち包括信託は、右の①から⑥の信託財産のうち二つ以上の財産を一つの信託契約で引受けるものをいい、昭和五十七年四月の法律改正に伴う施行規則で新たに定められたものです。いろいろな名称の営業信託について述べますが、これらは信託目的、信託財産、その管理処分方法などをもとにつけられた名称です。