2014年6月16日月曜日

新聞記者の留学生

私がまだバークレーのカリフォルニア大学にいた頃のことである。あの大学には多くの日本人の留学生がいた。留学生といっても日本では皆、会社や、大学や、研究所で立派な職を持っている人たちである。これらの人々は謙虚に、大学院の講義やセミナーに出席して、できるだけ多くのことを、アメリカの大学から学び取ろうとしていた。その中に某新聞社のKさんがいた。たしかKさんは一年の予定でバークレーに来たのだと思う。遠い異国での日本人同士でもありKさんの人柄もあり、私はすぐKさんと親しく意見を交換する間柄になった。

それから問もなく私はKさんからこんな相談を受けることになった。Kさんの言うには、自分がバークレーで勉強できる期間は限られているし、一生のうち仕事から離れて、勉強に打ち込むことのできるのはこれが最後の機会だと思うという。また自分の上司に、アメリカの大学にいったら、新聞記事になるような出来事とは、全く関係のない基本的なことを勉強してこいと言われた。しかしこれは言うはやすく行うは難い要求である。一体どの教授の、どういう科目をとったらよいだろうとKさんは言うのである。

私はこのKさんの上司はまことに見識の高い立派な人物だと思った。もちろんKさんもこの上司の言葉をもっともだと言っていた。しかしアメリカに来て、Kさんの新聞記者としての血は騒いでたまらないようであった。あれは丁度、月へ人間を送るロケットが発射されるというので、アメリカ中が沸き立っていた時だったと思う。Kさんはどんな科目をとろうか困っていると言いながら、一方では矢も盾もたまらなかったらしい。しばらくその姿が見えないと思ったら、大学の講義はさておきスペースーセンターのあるヒューストンに、しばらくいってきたと言っていた。

アメリカの大学は約十一週間が一学期で、この一学期ごとがしのぎをけずる苦しい短期決戦である。正規に単位をとるのだったら「ちょっとヒューストンへ」などと言っていたら、たちまち落第してしまう。私は「月ロケットなどの話は、ほとぼりが覚めたらそれで終りですよ。それより本当に一生役に立つ、基本的な勉強をおやりなさい」とKさんに忠告したような気がする。

2014年6月2日月曜日

太平洋展開米軍部隊と第7艦隊

各種航空機の混合編成とすると整備支援が大変で、しかも各型の航空機は各々少ない数しかないから、予備機の余裕がなく、継続的な作戦が難しい事実も判明した。このため混成航空団編成は、訓練にはよくても実戦には適していないとして、AEFの編成を従来の単一機種方式に改める方向が検討されている。そうなると、派遣されるAEF部隊は大規模なものとなり、そう簡単に緊急展開ができなくなると予想される。

結局のところ、予見し得る将来においては、例えば嘉手納や三沢の米空軍部隊が撤退して、AEFが代わりに「必要な時に」展開してくるという状況にはならないであろうと考えられる。仮にそのような状況になったとしても、プレゼンスの効果を大きく減じないようにするために、かなり頻繁にAEF部隊が日本の航空基地(まだ返還されない米軍航空基地か、自衛隊の航空基地)に展開してくるようになるだろう。

一九九七年中期の時点で、米国はアジア・太平洋地域においては日本、韓国、フィリピン、タイ、シンガポール、オーストラリアに部隊を置いている。さらに、第7艦隊が西太平洋からインド洋に展開し、グアム島とサイパン島に海兵隊の装備を搭載した事前配備船(MPS)が置かれている。このうち、日本と韓国、そして第7艦隊を除けば、米軍人の数は百上二百人規模でしかなく、MPSもその運用管理に当たっているのは民間人が大半である。在日米軍は陸・海・空・海兵隊合わせて約四万人、在韓米軍はやはり陸・海・空・海兵隊合計三万六千人、そして第7艦隊は海軍と海兵隊で約一万五千人、総計九万人強で、これがアジア・太平洋地域の米軍十万人態勢の内訳である。

あくまでも平時における展開兵力で、危機や長期的人道支援活動が必要な状況になれば、当然、米本土やその他の地域から増援が行われる。また、アジア・太平洋地域の戦略状況や米国の利権が大きく変化して、米軍のプレゼンスを継続する必要が減じた場合には、これらの米軍の一部が削減される可能性もある。日本がどう考えようとも、米国は現在、この規模の米軍を展開させておく必要性があると考えているのであって、この点を誤解してはならない。

一般にはあまりよく知られていないが、第7艦隊といっても恒久的な編成、規模を持っているものではなく、所属艦艇は常に変化しているし、その数も常に変わっている。米海軍は太平洋と大西洋に各々一つの大きな艦隊を保有している。太平洋艦隊と大西洋艦隊である。太平洋艦隊の担当範囲は米本土西海岸からアフリカ東岸まで、つまり太平洋とインド洋で、同じ作戦範囲を担当する、より上級の陸・海・空軍統合作戦組織、「太平洋軍」の指揮下で作戦を行う。同じように太平洋空軍、太平洋陸軍も太平洋軍の下で作戦することになっている。