2014年12月1日月曜日

模擬陪審の事件内容

ある学者の研究でも、日系企業は米国の陪審裁判での勝率が米国企業よりも高いことが実証されており(丸田隆著『アメリカ民事陪審制度』弘文堂)、そういうことも財界の方々には冷静に理解してほしいと思います。

ただ、もし本当に企業側のやったことが悪質なものだとしたら、その時には厳しい評決になる可能性は否定できません。模擬陪審の事件は微妙な事案だったので、病院に有利とも思える評決になってしまったわけですが、企業が本当に悪かったら、それでは済まないでしょう。

それは企業社会としても、こんな企業は同業者として許せないとして、悪徳企業にお灸をすえることを意味します。つまり、企業倫理向上の観点からしても、陪審導入は全体としてプラスでこそあれ、決してマイナスではないと考えられます。陪審制を恐れなければいけない企業とは、どちらかといえば企業倫理に無神経な、ろくでもない企業だくらいの見方をして、ほぼ間違いないのではないでしょうか。

さらに蛇足を加えるなら、自分の会社の従業員が陪審員に選ばれたとして、それが刑事裁判であれば、「会社のこととは関係ないが、ちょっと社会勉強のつもりで行かせるかな」くらいにしかなりません。それが民事陪審であれば、「わが社が将来何かのトラブルに巻き込まれた場合の参考になるかもしれないから、研修のつもりでしっかりとやってこい」くらいに言えるのではないでしょうか。

企業社会においても、将来、良識ある財界人が現れて、陪審制反対一辺倒から方向転換する時代がやってくるかもしれません。ひと昔前なら荒唐無稽とされた考えが、いつの間にか現実のものに、といった現象が最近起きていることからすると、こういう転換も全くあり得ないことではないと思います。