2014年5月22日木曜日

八〇の質問を収めるカード

ソーターを使用した解析の話をするためには、質問票で集められたデータが、どのように数量化されるかという話をしなくてはなるまい。おそらく誰でも知っているデータ・カードの図である。一枚のカードには縦八〇の行があり一行には二一のパンチを打つことのできる空間がある。縦の行は普通、質問票にある一つの質問を、コンピュータ化することができるので、一枚のデーターカードは理論的には、八〇の質問を収めることができる。そこでたとえばここに「あなたはカーター氏を大統領に選びますか」という質問があるとする。そして質問表の計画により、第二〇行がこの質問にあてられているとする。次にこの質問に対する解答は三種類、つまり「①、ハイ、②、イイエ、③、ワカリマセン」の三つであったとする。このような場合「① ハイ」はパンチ1、「② イイエ」はパンチ2、「③ ワカリマセン」はパンチ3に、打ち込むという約束をするのである。

パンチとは文字通り紙のカードに小さな長方形の穴をキーパンチーマシン(keypunch machine)で打つことである。集められた特定の情報に対して、このようにカードの行数とパンチ数とを指定する過程は、コーディングと呼ばれる。そしてこの情報のカードの、コードを示した表はコードーブックの質問票があらかじめ質問に対する解答を準備して、コーディングを行っている場合は、質開票そのものが、コードーブックになっているわけである。

情報の数量化といってもなんのことはない。質問とそれに対する数種類の解答が、カードの行数とパンチの番号に翻訳される過程が、コーディングである。そしてその翻訳に従ってカードにパンチが打ち込まれれば、情報のコンピュータ化か完成するわけである。バークレーの方法論のクラスで私たちが渡されたのは、このようにしてパンチが打ち込まれたデーターカードの束であった。このデータはもともとバークレーのサーヴェイーリサーチーセンターがユダヤ人協会から依託された、反ユダヤ主義研究のデータであった。

あのデータの質問票は十何ページのパンフレットで、もとのデータは一人の被調査者について、データーカードー一枚に打ち込まれていた。方法論のクラスにいたわれわれ学生は、既にコンピュータの磁気テープに記録されていたデータのなかから、自分たちの好みに応じて、数十の質問を選び出していた。われわれはそれぞれ選び出したデータに基づいて、仮説を検証する課題を与えられていたのである。

忘れもしないあの調査のサンプルは二八七一人であった。ということは二八七一枚のIBMカードにデータが入っているということである。われわれは、そのカードの入った箱をかかえて四、五人ずつ夜のリサーチーセンターに通った。昼間は他の研究のため、ソーターを継続して使用することができなかったからである。われわれは慣れない手つきでソーターの右上の台にカードをそろえて置く。そして行数のダイヤルを目的の数に合わせて、スイッチを入れると、データーカードはソーターの上を流れて、それぞれのパンチに対応するポケットと呼ばれる箱のなかに分類されていく。

ソーターはカードのパンチの穴を引っかけて、パンチ1のカードは右端の第一のポケットに、パンチ2のカードは第二のポケットにというように、それぞれ一二のポケットに選び分ける。そしてソーターの目盛りはそれぞれのポケットに落ちたカードの数を、記録する仕組になっていた。まさに機械の名前のように、カードを数えて分類する(counter-sorter)のである。もちろんあの原始的な機械は、手で数えるより速くて正確である。しかしソーターをいじっていた仲間は皆一様に不器用だった。ソーターがカタカタいい出すと思うとたん、カードが機械に引っかかって無残に破れる。それと共に悲鳴ともため息ともつかぬ声が上る。カードが機械に引っかかると、われわれは時間をかけて破れたカードを一枚一枚、ていねいに機械から外さなければならなかった。そして破れたカードの破片を手掛りに、キーパンチーマシーンで一枚一枚カードを打ち直さなければならなかった。パンチが一つ狂ったらデータの数がすべて狂ってしまう。

2014年5月2日金曜日

モーゲージ・バックド・セキュリティ(MBS)

これらの四種はモーゲージ・バックド・セキュリティ(MBS)と総称され、パススルー証券として総括される。なぜパススルー(Pass-through)と呼ばれるのか。

それは発行金庫は同じような金利・期日等の抵当貸付金(モーゲージーローン)をまとめてプールして信託し、その信託証書を裏づけ(Backed)として商品化・流通化しやすい証券に細分化して発行する。

そして元利金や抵当物件上の権利はそのまま細分された債券の購入者に移行し、発行体をパススルーしてしまうからである。上記の四商品は保証・平均期間等が若干異なるが、基本的には発行者は抵当債権(資産)を実質上売却したと同じ効果がある。

モーゲージ担保債券(MBB)は七五年にS&Lなどが開発したもので、パススルー証書と異なり担保物件・元利金は債券購入者(投資家)に細分化・直結せず、表面的には発行体の発行する金融債と変わらず、ローン残高は発行体の貸借対照表にそのまま残っている。

一方、ペイスルー証券とは、パススルーとMBBの中間で、八三年にFHLMcが初めて開発した。現在は証券会社、貯蓄金融機関、保険会社なども続々と発行し、一般にCMO(Collat-eralized Mortgage Obligation抵当担保債務証書)として知られている。

発行体はモーゲージ・ローンを担保としてCMOを発行し、財務諸表上は債務として記帳されるが、元利金返済はCMO購入者(投資家)に直結(ペイスルー)しており、担保期間グループに応じ長中短各期の多様な債券が発行可能で、投資家のニーズに随時適合し、そのため多種多様の投資家をこの市場に呼びこむことに成功した。

民間発行体は主に特別の金融子会社を作り、これに発行させて自分は債務の直接負担者とはなっていない。しかし担保・格付けは厳格に守られているので投資市場での評価は良好で、最も標準的な抵当債権担保証券として着実に現在市場を拡大している。