2016年3月1日火曜日

平和と安全では副次的役割

だが、総会演説が盛り上がらないのは、単なる儀式と化したせいばかりとは言えないだろう。国家における議会とは違って、もともと国連における総会の権限は、限定されたものだからだ。

なるほど国連憲章は、第一四条で「一般的福祉または、諸国間の友好関係を害する恐れがあると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勧告することができる」として、広範な権限を与えているかに見える。だが一方では、第一〇条で、加盟国や安保理に「勧告することができる」と述べ、原則として、決議が拘束力を持たないことを明確にしている。

国連創立にあたっては、米、英、旧ソ連、中国が参加した一九四四年夏のダッバートンーオークス会談で、大国主導の運営方式が固まったが、四五年にサンフランシスコで開かれた創立会議で、中小国の権限を拡大する重要な修正が行われた。総会に一般的な審議権を持たせ、勧告権を与えて大国を牽制する仕組みにしたのは、こうした経緯からだ。

また、経済社会理事会の権限も拡大され、総会の権威のもとに置かれることになった。実際に、事務総長や経済社会理事会に対する総会の勧告は、単なる奨励といった次元を越え、実質的な決定の意味を持っている。総会が、途上国の経済開発などで重要な役割を果たしてきたのは見落とせない点だ。

だが、憲章は、平和と安全の維持については優先的に安保理の権限に委ね、総会には二次的な役割しか認めなかった。憲章第二一条で「安保理か任務を遂行している間は、総会は安保理か要請しない限り、いかなる勧告もしてはならない」と定めた規定などがそれである。